2008年08月26日

羆嵐

羆嵐(くまあらし)を読んだ。

088242.jpg

三毛別ヒグマ事件についての話は以前から知ってたけど、実際に読むと実に恐ろしいお話でした。詳しい内容は、これから読む人のために多くは触れませんが、自然と共に生きていた当時の開拓民の厳しい生活などもよく描写されていた。

当時の開拓民は、人肉の味を覚えて人を襲う羆に対し、鉄砲等は一部の人しか持っていなかったそうで、鎌やナタで対抗する以外なす術はなかったそうです。そして、襲われたのは、夫の留守を守っていた無力な妻と子供達でした。生きたまま身重の女性の腹を裂き、お腹の胎児を引きずり出し、女性の頭に咬みつき頭蓋骨ごとバリバリと食べ、頭髪を僅かに残しただけで、その殆どを胃袋に収めた羆。

しかも、その妻と子供の通夜にも、棺の中の亡骸を食べに羆が現れます。その光景を家の中で隠れて見て(聴いて)いた家族にとって、地獄絵図そのものだったでしょう。人肉の味を覚えてしまった羆の恐怖は想像を絶するものがありました。

時は現在になり、道南でも数年前に木古内町のトンガリチリチリ林道沿いの渓流で、釣り人がヒグマに襲われ食べられた事件があった。確か?この事件の直後、近くに車を停めて林道を歩いていた女性も羆に襲われ、命からがら車に戻って難を逃れたそうです。この時の羆の行動は、自分のエサ(釣り人)を横取りされると思ったので、女性に襲いかかったらしい。

山では羆避けのために鈴やホイッスル、爆竹などを携帯します。これは、羆が人間を避けるという行動をとるため、人間の存在を知らせるのが目的です。しかし、人肉の味を覚えた羆に対しては、エサのありかを教えるようなものでしょう。

この本を読むと、人肉を喰らう羆が実に恐ろしい野生動物であるように描写されていますが、読み進むうちに、羆が人間をエサと捉えた場合の自然なお話に思えてしまいました。不謹慎かもしれませんが、ヘビがカエルを食べるのと同じです。

大正4年のこの事件以来、羆に食べられたり襲われて命を落とした人の数がどの位なのか私には分かりません。しかし、一年で交通事故の犠牲で亡くなった方や、無差別殺人の犠牲者なら羆の犠牲者より二桁か三桁は数が多いのではないでしょうか。

高速道路を家族でドライブ中、飲酒運転の大型トラックに追突され、生きたまま焼かれた子供達や地下鉄でサリンを撒かれ犠牲になった方々、秋葉原で無差別殺人の犠牲にされてしまった方々等々・・・

自然(羆)の力は恐ろしいとはいえ、本当に恐ろしいのは、やっぱり人間でしょう?

変なオチがついてしまいましたが“羆嵐“必読の一冊です。



                            人気blogランキングへ
posted by 黒ウサギ at 00:10| ☔| Comment(12) | TrackBack(0) | 戯言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
恐ろしい話ですねえ・・
以前に漫画で見たような・・
その時は当然作り話だろうと思ったのですが。

でも、確かにアフリカの平原とかで肉食動物と草食動物のあいだでは普通に起こっていることですね。

これを読んだ黒ウサギさんは、ペッパースプレーの他に空気銃かなんかを装備したくはなりませんか?

Posted by 二兎を追う男 at 2008年08月26日 01:16
黒ウサギさんへ

子供の頃は旭川近郊の田舎で遊んでいましたが、熊よりヘビが怖かった。でも、マムシは生息していなかったんですね。
函館に来てから道南はマムシが生息していると聞いて、野山で遊ばなくなりました。小心者!!

マムシより熊って恐ろしいですね。
登別の熊牧場の人間の檻から、ガラス越しに熊と鼻を突き合わせると、両腕で輪を作ったより顔(頭)がでかかった。北海道のヒグマは特別です。

以前、鉄砲を持ってハンターをしていた時も、熊にだけは遭いたくなかったものです。
上磯(現北斗市)の峨朗鉱山の池(水溜り)にカモ撃ちに行った時、手の掌を広げて1.5倍ちょっとの新しい足跡を見た時はビビッた。     
想像しただけでも、いい年して今晩オネショしちゃいちそうです。

そんな山の中へ出かけて、貴重な写真を撮って来てくれる黒ウサギさんはエライ!尊敬します。
Posted by プー at 2008年08月26日 01:50
二兎を追う男さんへ

本当に恐い話でありました。

普通のクマはやっぱり逃げてくれますから、銃はいりませんね。
というか、空気銃ならほとんど役に立たないと思います。
やっぱり遭わない努力というか、予防重視でしょうね。
Posted by 黒ウサギ at 2008年08月26日 08:05
プーさんへ

マムシは意外と好き?なんですが、私はクマよりスズメバチが嫌いです。
被害はクマの何倍、何十倍もあるし死者も多いはずです。
クマの力によって殺されるのは理解できますが、
あんな小さいハチの毒針で化学的に殺されるのに我慢できませんね。

話がそっちに行ってしまいますが、仕事の終りが遅く、22時過ぎにメイトで我が家へ向う途中、明らかに飲酒運転と思われる目が行っちゃってるドライバーが信号を無視して強引に右折、私は直進とか、パボッツの横からいきなり発進する車・・・こんなシーンがよくあります。
私には、何をするか分からない人間の方が絶対恐いんですよ〜
Posted by 黒ウサギ at 2008年08月26日 08:15
三毛別羆事件は本当に恐ろしい事件ですよね。熊の何が恐いって、言葉が通じない、走っても勝てない、力でも勝てない、これじゃぁ襲われたらどうしようもありません。熊にエサだと思われたら、覚悟を決めてナタを構えるしかないでしょうね。山に入る時、私は必ずナタを携帯します。でも、黒ウサギさんと同じく、私も人間の方が何十倍も恐いです。

余談ですが、以前知り合いから聞いた話なんですが、その人は取引先の看護婦さんから聞いたと言っていました。もしかしたら黒ウサギさんの話の女性の事なのかもしれないんですが、木古内の林道を歩いていた女性が熊に襲われ、何とか逃げてきたそうです。函病に運ばれたんですが、函病では対処出来ないと言うことで札幌の病院にヘリで回されたらしいのです。で、その怪我なんですが…熊に後ろから叩かれたらしく、後頭部の頭皮がまるで蓋のようにペラペラとなっていて、頭蓋骨が見えていたらしいです。この話を聞いたときサブイボ全開でした。
Posted by ショウセイ at 2008年08月26日 21:06
ショウセイさんへ

確かに本気になった熊にはかないませんね。
今は最後の切り札、熊避けスプレーがあるので何とかなる(ならないと思うけど・・・)かもしれません。出会い頭ならスプレーを噴射する余地がありますが、本当に人間を食べる気なら後ろからそっと近づくでしょうね。そしたら一巻の終わりです。

私も以前、顔をクマに叩かれた人を見たことがあります。あごと鼻が無いんです。それでもしっかり生きています。昔は、『クマに一発殴られれば骨ごとメロン一個分の肉を取られる』ってよく言われていました。これだけの事を書いても、私はやっぱり人間の方が恐いです。昔、酔っぱらいのトラックに巻き込まれて死んだバイクのお兄さんは後輪に頭をひかれました。私はその後ろにいたんですが、一週間ご飯を食べられませんでしたよ。そんな交通事故は毎日でしょう?クマに食べられたって話は年に一度もないはずですからね。
Posted by 黒ウサギ at 2008年08月27日 00:29
人類は、食物連鎖のトップに君臨していると勘違いしていると思います。
実際の“肉体”を考えれば、動物の中では“弱い”種族ですよね。多分、丸裸状態なら、ヒエラルキーの半ば辺りではないかと(感覚的に)思います。

外国では、トラが良く人肉の味を覚えて、襲う話を聞きますよね。カナダでは熊(グリズリー)が毎年人を襲う話をガイドさんから聞きました。そうそう、熊は人(獲物や敵)を殴るんですよね。その一撃の破壊力は凄まじく、グリズリーなんかにやられると一撃であの世行き(体は削り取られように無くなる)だそうです。

人間は、強靭な肉体の代わりに、強靭な精神力と知能を身にまとうことで、野生のドウ猛かつ強靭な動物よりも遙かに大きな“力”を手に入れています。ただ、人間の“精神力と知能”は完全なモノではないので、時に(頻繁に?)自分たちに、その“最悪の力”を使う事がありますね。

『三毛別ヒグマ事件』のお話は知りませんでした。確かに、人間から見て、まさに“地獄絵図”ですね。当事者にとっては耐え難い出来事ですね。

ただ、観方を変えると、人間って、他の生き物(場合によっては他の人間)に対して、毎日、遙かに多くの“命”に対して、それに勝るとも劣らない行為を繰り返していますね(そうしないと生きて行けないのが人間ですよね)。

げに恐ろしきは人間の(不完全な)精神&知能です。
Posted by 阿頼王 at 2008年08月27日 08:41
阿頼王さんへ

精神という点では、一度だけ羆と5mほどの距離でにらみあった事がありましたが、その時ほんの一瞬ですが「羆は気が弱い奴だ」と思いました。私が睨んだだけで、オドオドソワソワしはじめたんです。その時は私をエサと思ってはなかった訳で、相手の不注意でのニアミスでしたが、羆は逃げたくてしかたない感じをありありと感じました。

昨日の夜遅く帰り夕食(夜食?)を食べていたら、妻が「今日出勤途中カラスがネズミの死体を食べていてハラワタが出て、それをついばんでいて気持ち悪かった」と話したんです。食事中なんで、「そんな話するなよなぁ〜」と言ったのですが、よく考えてみると、私がその時食べていたイワシだってハラワタを箸でつまんでいた訳ですよ。芋虫を食べる人を気持ち悪いと思う人もいれば、美味しそうと思う人もいる訳で、実に当たり前なのかもしれませんけど、『三毛別ヒグマ事件』の羆にとって人間は美味しい食べ物、そして人間には地獄絵図です。観点が違うと随分見方が変わるものです。

それに引き換え、食べる為に殺すのではなく、ウサ晴らしや誰でもよい殺人など、どの観点から見ても納得いきませんよ。精神を犯されていたといえばそれまでかも知れませんけど、やっぱり納得いきません。
やっぱり恐ろしいのは人間でしょう。
Posted by 黒ウサギ at 2008年08月27日 12:08
黒ウサギさん
こんばんは

事件へのリンク読んじゃったらもう‥今夜チビリそうですよ(震)

熊に挑む孤高なるマタギな映画みたいのは観たことありましたが
今ほど山に興味無かった頃に観たものですから〜。

最近あった松前でのハンター死亡事件や、北桧山での行方不明女性捜索打ち切りな事件も熊に絡んでいそうな‥。

当事者な熊は石鹸臭とかにヨダレものかも知れませんね。

なんともこの所、山への深入りに躊躇している自分であります。

虫攻撃も少ないこれからがね、勿体無いと思いつつ‥。

熊絡みな事件は確かに社会悪な事件には及びませんが
比率で考えますと、大雑把に冬眠時季削除、悪天候な日を削除(二次的以外は入山無し)、山と社会との人口比率とか‥

事故が年に1〜2回としても、思ったより高い確率な気がしないでもないような‥。

冷静さも失いかねない且つ最悪な状況も念頭に置けなければ‥などと小心者なオイラにはビビリ赤表示域かも知れないな〜なんて‥プルプル。
Posted by mori at 2008年08月27日 23:56
moriさんへ

なるほど・・・確かにクマに襲われる確立は高いかも?

人とお話をする時には相手の立場を考えます。

それと同じで私がクマになったとしたら、春は山菜採りの大渋滞ですから、人に遭わずにすむ方法は、昼間はじっと隠れていることでしょうね。

夏には登山者が沢山来ますから、登山道を避けて森の中でじっとしています。そして人が歩かなくなった時間に登山道を歩いて楽に移動するでしょうね。途中でウ○コもしちゃうかもしれません。
秋にはまた山菜採りがやってくるし・・・冬眠のため沢山食べたいのにって感じでしょうか。

人が野山を恐れるのは、人工的な物に囲まれた街に住み慣れてしまい、自分とは別世界になってしまったからなんだと思います。特に物理的な力の象徴である羆を恐れるのでしょう。何度も書きますが、スズメバチの方が死亡率は断然上ですし、道に迷う遭難もかなりの数だと思います。

クマに襲われないようにするには出かけなければいいのですが、私の場合はそうも行きません。万一に備えて道具(moriさん持っている?でしょう)と心の準備を怠らなければ、まあ大丈夫だと思います。
Posted by 黒ウサギ at 2008年08月28日 00:46
黒ウサギさん
どうもです

準備と冷静さと熊さんの立場で‥ですね。

いざ入林しちゃうと奥へ奥へと導かれてしまいます。

導かれ‥ではなくて、この辺を自己改革しなければいけませんね。

冷静さキープには下調べ・予定(行程)・判断・意志意向という事なのですね。

色々とありがとうございます。
Posted by mori at 2008年08月28日 01:27
moriさんへ

最初は複数の人数で行くのが一番良いのですが・・・

二人なら1/2、三人なら1/3と恐さも少なくなりますね。

自分の中で必要以上に恐怖を膨らませている事だと気がつくはずです。

馴れちゃうと平気になるものですよ。
Posted by 黒ウサギ at 2008年08月28日 07:48
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/105428049

この記事へのトラックバック